研究分担者 |
多田 光宏 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (10241316)
近藤 哲 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30215454)
加藤 紘之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80002369)
小林 正伸 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (80241321)
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研究概要 |
肺癌の前癌病態と考えられている肺AAHの遺伝子変異を調べ,肺癌の発癌機構を解明することを目的として以下の研究を行った.約3万のヒト遺伝子の中から1300の癌関連遺伝子および比較対照遺伝子を選択し,それぞれの遺伝子における特異的配列を認識するプライマーを配したマイクロアレイプレートを作成した.プライマーセットは各々500塩基対の産物が得られ,かつ他の遺伝子との間に相同性のないように設計した.一方で当科関連施設における肺病変(肺癌,肺AAH)切除検体を収集し,超低温下にて保存した凍結組織ライブラリー,およびパラフィン包埋切片ライブラリーを作成した.肺正常組織において遺伝子変異が細胞の重層化に関連する因子としてcaveolin-1遺伝子が同定されたことを受けて,この遺伝子に着目し癌関連遺伝子の免疫組織学的検討として,正常気管支上皮・AAH・肺癌における発現状況をパラフィン包埋切片とcaveolin-1特異的抗体を用いて比較検討した.正常細胞および肺AAHにおいてはcaveolin-1の発現が見られたが,肺腺癌においてはほとんどの症例で発現の低下が認められた一方で,肺扁平上皮癌では一部の症例で強発現しているものが認められた.このことから,肺扁平上皮がんにおけるcaveolin-1遺伝子の役割は不明であったが,肺AAHから肺腺癌に至る発癌の過程においてcaveolin-1遺伝子発現が減弱することが,癌化にとって重要なステップである可能性が示唆された.
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