研究概要 |
センチネルリンパ節の検索法として従来の色素法やアイソトープ法を使用せず、磁気を応用した新たな方法を開発中である。まず磁性超微粒子としてフェリモキシデス、MzZnフェライト、Fe_3O_4マグネタイトの三種類を磁気マーカーの候補とし、センチネルリンパ節の同定に可能か否かを検討した。その結果、外部印加磁界10ガウスの条件下では、MnZnフェライトは高濃度でしか磁界変動を確認できず、Fe_3O_4マグネタイトは低濃度で急激に磁性が失われる欠点が認められた。従って三者の中ではフェリモキシデス(商品名フェリデックス)が最も適していると考えられた。次にブタを用いた動物実験を行った。ブタの乳腺ならびに右中葉肺実質にフェリデックスを2ml注入し、腋下リンパ節、右肺門リンパ節の磁気を測定した。その結果、右腋下リンパ節から5.5μT,肺門リンパ節から0.1μTの磁気が検出された。まだ地磁気、商用電源ノイズの除去の問題が完全には解決されていないが、手術室内でも使用可能なペンシル型のセンサーを試作し、臨床応用の段階に入った。乳癌において癌組織周囲にフェリデックス2mlと錫コロイド(アイソトープ)を注入し、40分から60分後に腋下リンパ節の磁気ならびにγ線量を測定した。その結果、磁気測定法はアイソトープ法と比較してセンチネルリンパ節同定率になんら遜色ないことが判明した。平行して肺癌においてもフェリデックスを癌組織周囲に5ml注入し、およそ60分後にリンパ節を郭清して磁気を測定した。現在30数例に応用したが、およそ90%の症例においてリンパ節内の磁気が測定可能であった。うち一例では磁気検出が可能であったリンパ節のみに微小転移巣が認められ、センチネルリンパ節を同定している可能性が高いと考えられた。今後症例を重ねて磁気と微小転移巣の関係を検討していく予定である。
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