研究概要 |
【研究目的】センチネルリンパ節(以下SN)は腫瘍から流入する最初のリンパ節である.SN同定の意義は、このリンパ節に転移がなければ他のリンパ節には転移は生じていないとする仮説が成立することにある.もしSNに転移がなければ郭清の省略が可能である.SN生検に基づく手術は,米国で乳癌や悪性黒色腫を中心に臨床応用が始まっているが,肺癌ではまだ研究が始まったばかりである.現在,SN同定法には色素法とアイソトープ法(以下RI法)がある.肺癌では色素法は,リンパ節の炭粉沈着のためSN同定は困難である.RI法は,SN同定率は高いが、使用は施設や場所が限られており,取り扱いが煩雑でる.これらの問題を解決するために,肺癌に使用可能な,RI法と比較してその検出率で遜色ない,安全なSN同定法である磁力を応用する方法を発案した.本研究では,非小細胞肺癌患者において新開発の磁力を用いた方法により,SNを同定し得るか検証することを目的とした.【研究方法】磁気を発する磁性体としてMRI用肝臓造影剤、フェルモキシデス注射液(FDX)を使用した.対象は非小細胞肺癌患者38例である.開胸後、腫瘍周囲にFDXを局注した.その後に肺葉切除及びND2aの系統的リンパ節郭清を施行した.郭清リンパ節は、我々が開発した携帯型高感度磁気センサーで磁力を測定した.【研究成績】SNの同定率は81.6%であった.正診率、敏感度、偽陰性率はそれぞれ96.8%、85.7%、14.3%であった.SNが磁気陽性となるまでの時間は、FDX投与後最短で22分,中央値85.7分であった.【結論】我々の開発した磁性体法による非小細胞肺癌患者におけるSN同定法は安全であり、RI法と同様に正確で鋭敏な方法である.今後さらに症例を重ね、本法の適正及び安全性の検証が必要である.
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