研究概要 |
左心機能の評価には従来から種々の指標が用いられてきたが,左室前負荷・後負荷に影響されない心収縮能指標として近年,左室圧容量曲線(LV-loop)が広く応用されている.重症心不全に対する機械的補助循環法の代表である補助人工心臓では左房脱血・左室脱血の如何を問わず左室前負荷や後負荷は大きく変動し同時に左室等容収縮期自体の存在も大きく変化する.今回,連続流ポンプである遠心ポンプによる動物実験で,左房脱血では補助流量増大につれて後負荷は増大,前負荷は減少しLV-loopは左右の直線を維持しながらend-systolic LV pressureの上昇を示した.一方,左室脱血では心拍全周期での左室容積変化が発生するためLV-loopは等容収縮期・拡張期の欠如した形状である底辺の広い三角形を示した. 拍動型補助人工心臓(LVAD)による補助時には左房脱血では自己心拍非同期駆動時に左室容積は一定の周期で増減を繰り返しLV-loop上の左室収縮末期圧時期での容積関連(End-Systolic Pressure-Volume Relationship : ESPVR)も周期的に変化した.このためESPVRの変化からEesの予測が可能となり自己心の心収縮能評価が可能であったがLVADの同期駆動ではこの現象は存在せず不利であった.一方,左室脱血によるLVAD駆動では自己心拍との同期・非同期駆動の双方で左室等容収縮期容積の変動を来し理論的にLV-loop上のESPVR決定は困難であった.しかしながらLVAD同期駆動時に自己心拍周期を分割しながらLVAD駆出時期を面しながらESPVRへの影響を解析してみると自己心拡張期前半に左室等容収縮期への歪みの少ない至適駆出時期が存在していたが自己左室駆出時期に若干の左室後負荷減少を来す可能性とLVADの充満が自己左室駆出で行われる結果,LVAD駆出が時にLVAD拡張期にも行われLVAD内血流波形に二層性ピークが出現する事実が発見された.この時,LVAD流量は自己左室機能の影響を受けるため駆動条件での制御は容易でなく臨床的には問題と判断された.現在,自己左室の拍動周期を10〜12等分し50%補助LVAD駆出を行いさらなる解析を実施している.次年度での新たな計画展開への補助人工心臓使用時の評価指標確立は可能と考え統計解析と血液ポンプ駆動条件との整合性を生体心各種条件下で計測を継続している.
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