研究概要 |
本年度はテクノポリマー(粉径20mμ)の左冠状動脈主幹部注入にて選択的左室不全心を作成し,拍動型左心補助人工心臓(VAD)を駆動させ,対照群・左房脱血VAD群・左室心尖部脱血VAD群を設定の上,50%補助率でのVAD約4時間駆動補助時の自己心左室ループの推移,ESPVR解析など前年度と同じ計測を行いながら,心筋細胞の形態変化,細胞化学的検討を行い,アポトーシスへの進展mRNA上の変化などをVADの有無,脱血部位による差異,4時間補助における経時的変化などを比較検討した. 左室心筋の光顕比較では対照群と左房脱血VAD群で急性心不全作成後4時間での所見に有意差無く,共に細胞内浮腫の出現,筋原繊維の錯綜配列などを認めたが左室脱血VAD群では4時間後も対象値とほぼ同様であった.さらに透過電子顕微鏡による比較では,不全心ではテクノポリマー注入による左室微細梗塞作成による結果,筋原繊維は大きく膨潤しミトコンドリアは大小混在した.左房脱血VAD群では4時間後に筋原繊維の錯綜配列はむしろ増強していたが左室脱血VADでは整然とした筋原繊維配列をしめし一部ミトコンドリア軽度拡大を認めたにすぎなかった.画像所見の計量化を行ったが,ミトコンドリア面積・ミトコンドリア数では不全心作成前後・VADの前後と種別などの間に有有意差を認めなかったが,筋原繊維面積・心筋内細胞浮腫を示す面積では不全心作成後に有意に悪化を認めたがVAD両群では有意変化を認めなかった.Immunobinding Assay法により(1)β-adrenergic redeptor,(2)Angiotennsion II type-1 receptorおよび細胞アポトーシス因子として(3)Bcl-xl,(4)Baxなども計量し対象値と比較した.(1)および(2)で左房脱血VAD群で有意に増加したが(3)・(4)では全ての群で有意差を認めなかった. したがってイヌにおけるVAD効果の検討では,急性左心不全において(1)左室脱血VADは明らかに心筋形状を正常形態に維持する,(2)β-adrenergic redeptorは増加傾向を示し変力効果増大へと作用する,(3)左室脱血VADではAngiotension II type-1 receptorからみて左房脱血より補助中の心筋圧負荷が少ない,(4)4時間の駆動実験では心筋アポトーシスへの進展を評価出来なかった.
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