研究課題/領域番号 |
13470270
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
高尾 仁二 三重大学, 医学部, 助手 (30263007)
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研究分担者 |
登 勉 三重大学, 医学部, 教授 (60106995)
矢田 公 三重大学, 医学部, 教授 (80093152)
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キーワード | 肺癌 / 癌化学療法 / 感受性試験 / MTAP / 遺伝子変遺 / プリン代謝 / Translational research |
研究概要 |
目的:プリン代謝酵素Methylthioadenoisine phosophorylase(MTAP)は非小細胞癌の30%に欠損しており、このMTAP欠損細胞はプリン・サルベージ回路を介したアデニン・ヌクレオチドが供給されないため、プリン新生合成酵素阻害剤に選択的に感受性が高いと推測される。一方、正常細胞はMTAPの基質で血中に存在するMethylthioadenosine(MTA)を利用してアデニン・グアニンを産生できるのでプリン新生合成酵素阻害剤による影響は少ない。その差異を利用した選択的癌化学療法の可能性をin vitroで証明する。方法:(1)抗癌剤感受性試験(CD-DST)により腫瘍のMTXに対する感受性を評価(MTXは40μg/ml、4μg/ml、0.4μg/mlの濃度で24時間接触。これにMTAを加えた群と加えていない群を比較検討)。(2)Real-time PCR法にてMTAP遺伝子変異の有無を判定する。結果:術前にinformed consentが得られた原発性肺癌手術症例38例より腫瘍検体を得た。(1)CD-DSTに用いる通常の培地ではMTXの制癌作用が現れにくいことが判明したため、培地を葉酸含有量が少ないRPMI-1640培地に変更。(2)real-time PCR法によるMTAP遺伝子変異検索は22例で測定を終了しており、3例に遺伝子変異を確認した。MTAP正常例でMTXに感受性を認めた例は、MTA添加によりMTX感受性が低下することより、プリン新生合成阻害治療時のMTAによるMTAP正常細胞のsalvageの可能性が示唆された。一方、現在のところMTAP変異例ではMTX感受性を認めておらず、MTA添加の効果など詳細は不明である。展望:理論上,MTAP変異例はMTXに感受性が高いと考えられるが、臨床例では他の感受性耐性のメカニズムが関与している可能性もあり、症例数を増やして検討中である。さらに、MTAP変異の有無が判っているcell lineでも検討中である。また、臨床検体でのMTAP変異診断の妥当性を裏付けるために、micro dissectionにより得た腫瘍細胞を用いた再検と抗MTAP抗体による免染結果との対応を計画している。
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