研究概要 |
外科的に再建できない虚血心筋に新生血管を誘導するのを目的に、新しい治療法が盛んに試みられている。血管新生を促すとされている種々のサイトカインをプロテインの形で、また遺伝子の形で導入したり、未分化な細胞を含む骨髄組織の移植、さらにはtransmyocardial laser revascularization(TMLR)等が試みられてきた。最近、臨床では創傷治癒を促進するためにリコンビナントbFGFが市販され、整形外科領域では褥創治療剤として用いられている。しかし、いまだにこの薬剤により促進された血管新生の直接証明はなされていない。それほどに治療により促進された新生血管の直接証明は困難である。我々は現在、直視下経時的非侵襲的に観察可能な家兎の耳介観察窓(rabbit ear chamber)モデルにて直径6.4mmのパンチアウトした傷に血管が侵入する過程を観察している。観察窓内の血管はすべて新生で、4,5週目には完成し、その途中では血管芽の発生過程が観察可能である。実験方法は確立したため、このモデルにおいて、血管新生因子をプロテインの形で用い、血管新生の速度測定、最適条件、促進するための足場条件、動静脈の分化時期、血管芽の形成等を検討することを計画した。家兎の阻血下肢における血管新生療法は血流が増加した、側副血行路が形成された等のすばらしい成果が報告されたが、実際の臨床では安全性、効果等まだまだ不完全なのが現状である。臨床で利用可能な最適な条件を求めて進めていきたい。
|