血管新生療法では新生した血管を直接証明することが困難であり、大多数の研究では間接証明に頼っている。そのため、虚血心筋では血流の増加、側副血行路の増加、温度の上昇などを新生血管が起こった説明にしているが、血管は新生しなくても起こる現象である。血管新生因子の効果の評価は、(1)血管芽から成熟血管までの経過を観察、(2)血管新生速度を測定、(3)血管の無いところに血管が新生などの直接証明を用いることが好ましい。本研究において、まず、血管新生速度を動物の慢性観察窓を用いて測定した。血管新生因子が目的部位に留まり、効果が出るかは未知であった。このモデルでは厚さ50μmの厚さの間隙を血管は二次元に外から伸展する。対照として生理食塩水を用い、血管新生因子を局所1回投与したところ1週間効果が持続し、血管新生速度の測定では至適条件では100μm/dayであった。リコンビナントbFGFを局所投与にて用いたが効果が1週間あったということは因子が局所に吸着し、効果をおよぼしていたことが考えられた。虚血心筋は心筋と血管以外は結合組織が多いため、結合組織に吸着することは充分考えられる。ただし、増殖因子が虚血部に拡散するかは別の問題である。観察窓内の血管は大多数が静脈であり、動脈は僅かしかない。動脈の壁構成細胞は比較的厚く、pericyteが主であった。観察窓を開けてchamber内の血管、細胞を免疫組織学的評価を行うことを試みた。
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