研究概要 |
SOD遺伝子導入マウスを用いた30分間の局所脳虚血モデルにおいて、虚血後1,2,3,4週間後のBrdU陽性細胞の発現および、NeuN(神経細胞のマーカー)Isolectin B4(マイクログリアのマーカー),GFAP(アストロサイトのマーカー)との2重染色を行い、これまで行ってきた局所脳虚血におけるこれらの発現の経時的変化に対するSODの影響を明らかにした。遺伝子導入マウスではSVZ(subventricular zone)、DG(dentate gyrus)においてBrdU陽性細胞の発現のピークが虚血後2週間後で野生株マウスと比較して早く、4週間後には発現は低下してくる傾向であった。野生株ではピークは3-4週間後でその時点ではまだ発現の低下を認めなかった。以上のことからSODは神経再生において善し悪しはともかく何らかの影響を与えている可能性があり、今後のそのメカニズムを解明する研究が必要である。現時点で考えているメカニズムはSODは脳虚血に対し保護作用があるため脳組織に与えるダメージが減じられ、神経幹細胞の発現のピークが早く短期間となるという間接的な影響とSODそのものが直接神経幹細胞に影響を与えることによって発現のピークが変化するということである。 また、大脳皮質において脳梗塞層の周辺にわずかながらBrdUとNeuN陽性細胞が認められた。これまで我々も含め多施設からもラットでは報告があったがマウス大脳皮質おいても神経再生が生じていることをはじめて明らかにした。発現の程度は遺伝子導入マウスの方が強い傾向があったが明らかな有意差は認めなかった。これらのことは脳梗塞患者における機能再生につながる可能性があり非常に重要な知見であると考えられる。
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