研究概要 |
免疫抑制剤の虚血ストレスに対する神経保護作用は様々な報告がなされている.その機序はcyclophilinやFK506 binding proteinなどのimmunophilinを介した作用と考えられている.Cyclophilin C-associated protein (CyCAP)は,immunophilinの生体本来のリガンドと考えられている糖タンパクであり,炎症反応の抑制に関与する。本年度はラット中大脳動脈閉塞モデルを用いてCyCAP mRNAの発現を調べ,その神経保護作用の可能性について検討した.雄SDラットの中大脳動脈永久閉塞モデルを用いた.虚血後2時間,1,3,7日の各時点(n=6)で断頭しin situ hybridizationおよびnorthern blotにてmRNAの発現を調べた.前者はDigoxigeninでラベルし(non-RI),後者は32PでラベルしたRNA probeを用いた.発現細胞同定のためNeuN, GFAP, ED1の免疫染色とin situとのdouble labelingを行った.Northern blot:皮質でのmRNAはcontrolでも軽度の発現を認め,虚血24時間後から発現が増加し,虚血巣周囲では3〜7日をピークに約4倍の発現上昇を,虚血中心巣では約8倍と著明な上昇を認めた.In situ hybridization : signalは梗塞巣周囲皮質の大型の細胞を中心に2時間から発現が増強し、それらの細胞の多くはNeuN陽性の神経細胞であった,3-7日になると壊死巣周囲から中心部にかけてED1陽性のmacrophage/microgliaと思われる細胞が出現し,これらにmRNAの発現が認められた.CyCAP mRNAは神経細胞を中心に広汎な発現を認め,虚血ストレス時に発現が増強した.3日目以降では虚血巣へ進入するmacrophage/microgliaに発現のshiftが認められた.CyCAPは炎症関連タンパクで,内在性の神経保護因子である可能性が示唆された.
|