本研究ではラットのモデルを用いて、臨床応用可能な治療法を開発することを最終的な目標とする。 1)正常成熟脳における挙動解析:正常成熟ラットを用いて解析を行ったところ、側脳室壁に接した部分にnestin陽性かつBrdUにてラベルされる神経幹細胞が同定された。その他の分子マーカーを用いた解析でも、発生期の分子機構と同様の現象が生じていることが示された。また、従来より指摘されている嗅球への神経幹細胞の遊走も確認された。 2)虚血脳における挙動解析:一過性全脳虚血としてはラットの4血管閉塞6分モデルを用いて解析を行った。本モデルでは、海馬の神経細胞は7日後には1-2%程度の生存細胞しか認められなかった。種々の分子マーカーで幹細胞の挙動解析を行ったところ、虚血侵襲に応じて側脳室周辺の神経幹細胞の分裂、増殖が増加していた。これらの細胞は海馬にも遊走しており、同部での神経細胞の再構築に関与している可能性が示唆された。現在、これらの細胞の動態解析と定量的評価を行っている。また、これらの自己神経幹細胞を賦活する治療法にて、海馬の細胞構築の再生、機能再建が可能か否かを、種々の成長因子を用いて検討中である。
|