研究概要 |
我々はこれまでに神経膠芽腫の浸潤に細胞外マトリックス分解酵素であるmatrix metalloproteinase(MMP)が重要であると報告してきた。本研究ではMMPの中でも特に重要とされるMMP-2の、膜型MMP(MT1-MMP)による活性化を調節する遺伝子の探索を行った。我々が考案した発現クローニング法により、MT1-MMPの新規阻害因子として脳細胞外マトリックスの構成成分であるプロテオグリカンTestican3のスプライシングバリアントN-Tesを同定した。N-TesはTestican3のN末端313アミノ酸をコードしC末端の3アミノ酸は置換されていた。N-TesはMT1-MMPによるMMP-2の活性化を阻害し、阻害活性はN末端の110アミノ酸領域にマップされた。同様の阻害活性はTestican3, Testican1でも認められたが、Testican2及びNーTesと同じドメイン構造を有するSPARC/BM40は阻害しなかった。N-TesとMT1-MMPの結合は免疫沈降法により確認された。神経膠腫51例(星状細胞腫9例;退形成星状細胞腫8例;神経膠芽腫34例)につき,ABIPRISM7700を用いTestican familyのmRNA発現量を計測した結果,Testican 3 familyは正常脳で発現が認められたが神経膠牙腫組織ではその発現レベルは低下していた。更にN-Tes, Testican3は神経膠芽腫由来U251細胞のコラーゲンゲル内浸潤を抑制した。以上のことからN-Tes, Testican3はMT1-MMPを阻害することにより神経膠芽腫の浸潤を抑制することが示唆された。
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