研究概要 |
脳組織における神経細胞自身の虚血耐性現象の存在が知られているが、脳虚血耐性現象の細胞内機構は、今だ解明されていない。最近、MAPK superfamilyが真核細胞のストレスならびにアポトーシスのシグナル伝達に重要な役割を果たしているとこが明らかとなり、当研究者も培養神経細胞のグルタミン酸毒素によるアポトーシスにおけるp38の関与を証明した(J Biol Chem272:18518-18521,1997)。本研究では、これまでの研究成果を動物モデルに発展させ、脳虚血における神経細胞の生死を制御する因子を分子レベルで解明し、虚血耐性現象の責任因子を同定することを目的とする。まず、ジャービル海馬遅発性神経細胞死モデルにおいて、MAPK superfamilyのうち特にp38の活性化が重要であることを証明した(J Neurosci 20:4506-4514,2000)。次にジャービルの一過性前脳虚血を用い、2分前脳虚血後に虚血耐性現象が見られることを確認し、MAPK supcrfamilyのうち、ERK、JNK、p38およびその活性型酵素の時間的、空間的発現変化をimmunohistochemistry Western blottingにより検討し、これらの酵素が虚血耐性現象の過程において各々異なる活性変化を示すことを確認し、各種MAPK阻害剤脳室内投与により、神経細胞の生死、虚血耐性に対して異なる効果を示すことを確認した。現在、虚血耐性現象を示す神経細胞内のMAPKの活性と、さらにMAPK familyの上流、下流(ATF-2など)や他の経路(Akt)との関連について検討を行っている。
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