研究概要 |
手術時材料より収集したヒト肉腫細胞の遺伝子解析をさらに22例行った。全例、液体窒素により新鮮凍結保存を行い、細胞DNAをphenol法にて抽出し、電気泳動およびスペクトロフォトメーターにてDNAの定量およびその切断を行った。その後CGHマイクロアレイ法を用いたハイブリダイゼーション法を行い、全染色体上のDNAの増強と低下についての解析を行った。その結果、骨肉腫において共通してDNAコピー数の増加が見られた領域は1Qtel10(1q),WHSC1(4P),CCND3(6P),MTAP(9P),INSR(19q),CCNE1(19q),PCNT2(KEN)(21q)であり、DNAコピー数の減少が共通して見られた領域はInternet Explorerブラウザの起動.lnk NRAS(1p),RAF1(3q)の領域であった。また肉腫の発生に関わる可能性が高いとされるP53遺伝子やc-myc遺伝子のコピー数の変化にはばらつきがあり、一定の傾向は見られなかった。転移を生じている骨肉腫では染色体の全領域にわたる遺伝子不安定性が高く、特に1Qtel10,CCND3,MTAP遺伝子の高度の増幅が見られた。対象として用いた転移を生じていない良性骨腫瘍では遺伝子不安定性はほとんど認められなかった。特に19番染色体短腕(19q)における変化は生命予後に関連することが示唆されたことがあり、今後この領域について特に注目して行きたい。その他に軟骨肉腫、骨巨細胞腫、神経肉腫・神経鞘腫に対してもCGHマイクロアレイ法を用いた全染色体領域の解析を行った。組織の保存方法や解析手法はすでに確立し、稼動しているので、今後さらにヒト肉腫の症例数を増やし、解析データを蓄積していく予定である。
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