研究概要 |
平成16年度は昨年に引き続き、ヒト肉腫の遺伝子解析を中心に行った。 1.ヒト骨軟部腫瘍細胞の収集と保存システムの確立について 本研究を遂行するために最終的に骨軟部腫瘍細胞材料を原発巣、転移巣を併せて合計85例を収集し、凍結保存した。材料採取に当たっては提供者の同意を得ることを原則とし、人権の保護に関して十分配慮して行った。 2.ヒト骨軟部腫瘍細胞の染色体分析とDNA抽出 手術にて切除された骨軟部腫瘍組織より細胞培養を行い、培養が可能であった34例についてG-band法による染色体分析を行った。その結果、良性骨腫瘍の8例を除き、染色体の構造異常または数的異常を認めた。全ての細胞DNAをphenol法にて抽出し、電気泳動およびspectro-photometerにてDNAの質と量の確認を行い、マイクロアレイ解析の対象材料とした。 3.ヒト骨軟部腫瘍細胞のCGH解析 独自に開発したプロトコール(J.Bridge 2000)によるCGH法に従い、labelling, precipitation, hybridizationを行い、コンピューターによる全染色体上の遺伝子の増幅と欠失について解析を行った。CGHを37例(マイクロアレイ法を含む)に行った。マイクロアレイ法では280種類の代表的腫瘍発生候補遺伝子に対して、遺伝子の増幅と欠失についての解析を行った結果、原発巣における遺伝子不安定性として、同一症例の確認される異常が9.2%であるのに対して転移性腫瘍では20.4%へ増加した。原発巣と転移巣を検討した結果、転移巣において原発性部位と比較してDNAコピー数が増幅されるのは1p36,8q24-qter,12p,14q,17p11-13,20q,21qの領域であり、逆に減少しているのは2p,4q,5p,18pの領域であることが明らかとなった。特に1p36領域のいずれのDNAも1.5倍以上に増幅された。
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