研究概要 |
我々はこれまでに未分化シュワン細胞がin vitro,in vivoの何れの状況でも長期間は生存せず、アポトーシスに陥ること、NGF/NGFRを介してdeath signalが生ずる事、sphingomyelin cycleを介し、転写因子NFkBの活性化により細胞死が生ずる事を明らかにした。このシュワン細胞の細胞死が神経再生能の経時的低下の背景にある。しかし、同じシグナルが低レベルの発現ではシュワン細胞柱の構成に不可欠であり、NGFRの発現レベルをコントロールする事で神経再生を多面的に改善できるものと考えられる。そこで一過性且つ部分的にNGFRの発現を抑制し、高い軸索誘導能を持ったシュワン細胞柱構造を維持する目的でアンチセンス療法を研究している。当初phosphorothioate型アンチセンスの利用を試みていたが、アンチセンスの非特異的効果、細胞毒性などの問題により期待した効果が得られなかった。そこでGene Tool社に依頼しNGFRに対するmorphorino型アンチセンスを作成し、これを用いた検討を行った。その結果in vitroではアンチセンス投与によりシュワン細胞の細胞死は抑制され、シュワン細胞柱構造を3週以上に亘り安定的に維持する事ができるようになった。更に、コントロール群では約1週で細胞は増殖能を失うが、アンチセンス投与により3週を過ぎても高い増殖活性が維持される事が確認された。この結果は第16回日本整形外科学会基礎学術集会をはじめ複数の学会で報告した。現在morphorino型アンチセンスの導入試薬がin vivoで使用困難な為これに変わる方法を検討し、in vivoでの効果を確認する準備をしている。
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