研究概要 |
我々はこれまでの研究で末梢神経損傷修復後の軸索再生がこれまで考えられていた骨格筋の変性、神経筋接合部の閉鎖だけではなく、ワーラー変性により形成される軸索誘導のマシナリーとしてのシュワン細胞柱の萎縮、変性により大きく影響されていることを明らかにしてきた。また、培養シュワン細胞を用いたin vitroでの評価の結果より神経成長因子(NGF)の低親和性レセプターであるp75NTRの過剰発現がシュワン細胞柱の変性に関与する事を明らかにした。同様の結果はSyroidらのNGFR knockout mouseを用いた検討でも見られており、これらの結果よりNGFRの発現を制御することでより長期に亘り再生軸索誘導活性を高める事ができるものと思われた。そこでNGFRに対するアンチセンスを作成しシュワン細胞の生存、増殖遺伝子発現への影響を調べた。アンチセンスはphosphorothioate型のものとmorpholino型のものを作成した。その結果phosphorothioate型ではアンチセンスの毒性が強くノンアンチセンス効果も高度であり、却ってシュワン細胞柱の萎縮は促進された。これに対し、morpholino型ではシュワン細胞の萎縮は4週間に亘り抑制され、また、BrdUを用いた検討では細胞増殖活性もこの間維持されていた。また、S100蛋白、glial fibrillary acidic protein,NGF,lamininの発現は良く保たれ、表現型への影響は見られなかった。そこでマトリゲル中にてシュワン細胞を3次元培養しmorpholino型アンチセンスの効果を確認した。また、後根神経節との共培養を行い軸索再生への影響を調べた。その結果、軸索伸長はコントロール群、4塩基ミスマッチ群に比較してアンチセンス群で有意に延長する事が確認された。
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