研究分担者 |
鳥塚 之嘉 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20324775)
名井 陽 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10263261)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60191558)
橋本 淳 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40237938)
冨田 哲也 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30283766)
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研究概要 |
近年の分子生物学的進歩により慢性関節リウマチ(RA)の関節破壊機序が徐々に解明されつつあり、中でもTNFa, IL-1b, IL-6を中心とした炎症性サイトカインとMatrix Metalloproteinase(MMP)-1,3,9,13等のタンパク分解酵素はその中心的な役割をしている。我々は以前からこれらのchemical mediaorの上流に位置する転写調節因子NFκBに注目しRA患者や実験的関節炎モデルの増殖滑膜でNFκBの活性が上昇していることを報告し、NFκBの転写活性部位への結合を阻害する、おとり型核酸医薬(デコイ)を開発した。また一方でHVJ(Hemagglutinating Virus of Japan)の細胞膜融合能を利用した遺伝子導入法、HVJ-Liposome法を確立し関節内滑膜細胞、軟骨細胞を対象に高効率で遺伝子導入が可能であることを示した。 これらの背景から、本研究ではRAのモデルとしてラット・コラーゲン関節炎(CIA)を発症させ、関節内にHVJ-Liposome法を用いてNFκBデコイを導入した。その結果NFκBの活性化とTNFa,IL-1b,の発現が抑制され、組織学的にもCIAによる関節破壊を抑制することに成功した。さらに将来の臨床応用を目指し霊長類での関節破壊抑制効果および安全性を評価した。カニクイサルにCIAを発症させ、NFκBデコイをnakedで関節内投与しても有効な関節破壊抑制効果と安全性が確保されることが判明した。また変形性関節症のモデルとしては、ラット膝関節前十字靱帯切除モデル(ACLT)を確立し、膝関節内にnaked NFκBデコイを関節内投与したところ、組織学的に軟骨の変性が抑制された。これらのNFκBデコイの炎症性サイトカインを介した軟骨変性抑制効果は既存のヒアルロン酸製剤と比較してもさらに優れたものであった。NFκBデコイ核酸医薬はRA患者の関節破壊予防を目指した治療に応用可能なだけではなくOAの予防にも有効であることが示唆された。
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