研究概要 |
特発性大腿骨頭壊死(ION)は大腿骨頭の無菌性,阻血性壊死をきたす疾患である。大腿骨頭圧潰が生じると股関節機能が著しく低下し,ADLは障害される。病態については国内外の精力的な研究にもかかわらず,いまだ明らかではないが,ステロイド投与やアルコール多飲などが危険因子になることが報告されている。なかでもステロイド投与によるものが多く,ステロイドを投与する基礎疾患を反映して,青壮年期に発生頻度が高く,治療に難渋する。また,社会的損失も大きい。これらのことから,IONの予防法開発が急務である。現在までの研究により,ステロイド性IONはステロイド投与後きわめて早期に発生していることから,基礎疾患治療開始前よりIONのリスク患者を同定することが,予防を考える上で重要である。臓器移植後など,ほぼ同一プロトコールでステロイド投与をうけていたにもかかわらず,IONの発生について同じ結果を見ないことは,ステロイド感受性の個体差が存在することを意味している。感受性に影響する因子として,ステロイド代謝能の個体差が考えられる。われわれはステロイド代謝酵素であるチトクロームP450(CYP450)の一塩基変異多型(SNP)が薬物反応性の個体差の原因である可能性を考えた。本研究では,当院における腎移植後の患者を対象とした。さらにさまざまな遺伝子学的手法(DNA chip, PCR-restriction fragment length polymorphism,直接塩基配列決定法)を用い,CYP450のSNP解析を行った。その結果,CYP2D6^*2および^*10Bホモ接合体で統計学的有意にはいたらなかったが,IONリスクが上昇傾向を示した。CYP2D6の遺伝子型決定により,基礎疾患治療前から,末梢血を少量採取することにより,IONリスク患者の同定ができる可能性が判明した。
|