研究概要 |
1.脊髄におけるin vivo patch clamp記録のセットアップ:従来より使用していたパッチクランプ用増幅器(Axopathc 200B)に加え,各種ソフトウエアやにより,脊髄におけるin vivo patch clampを行う環境は整備された.さら電子恒温槽の設置等により,露出脊髄への人工髄液還流系が確立し,各種レセプターアゴニスト,アンタゴニストの投与とwash outが可能となった.今後,本実験系を用いてデータの蓄積を行いたい. 2.ヒトにおける皮膚切開モデルの開発:実際の手術侵襲と麻酔機序を調べるために,4mmの切開をヒト前腕部に加え,切開および切開後の自発痛をVisual analog scale (VAS)で評価し,切開部より3mm部位にvon Freyフィラメントで疼痛を感じる閾値を測定した(primary hyperalgesia).一方,非障害部で151mNのvon Freyフィラメント刺激で疾痛を感じる範囲(secondary hyperalgesia)の面積を測定した.自発痛は切開時に最大となり,以後1時間以内に急激に減少した.primary hyperalgesiaは切開30分後より出現し,2日までみられた.secondary hyperalgesiaは切開後15-30分で明らかとなったが,6時間後には消失した。切開予定部へのリドカイン皮下注射はsecondary hyperalgesiaの出現を抑制したが,primary hyperalgesiaは遅れて出現した。Secondary hyperalgesiaが進展した後,切開部へのリドカイン注射はsecondary hyperalgesiaの範囲に影響を与えなかった以上より,手術侵襲を模した本皮膚切開モデルの開発により,脊髄ニューロンの興奮性増大によると考えられているsecondary hyperalgesiaの進展と維時の機序が異なることが示唆された。
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