研究概要 |
本研究は臨床面と基礎実験から急性肺傷害の発症機転におけるアポトーシス関連因子の関与を解明することを目的としたtraslational researchである。 1)急性肺傷害患者のマイクロサンプリング液中のアポトーシス関連因子発現の検討 臨床的にARDSと診断された患者を対象にして、新しく開発したBronchscopic microsampling法を用いて肺胞上皮被覆液を採取してその経日的変化を検討した。本方法は新規に我々が開発した全く新しい肺胞被覆液採取法である、従来の肺胞洗浄(BAL)ではわからなかった肺胞被覆液の絶対濃度を得ることができる画期的な方法である。現在近年アポトーシスとの関連が深いと言われているHMGB1などの濃度を検討している。その結果、血中HMGB1濃度は重症度に比例して高値を示すことなどが明らかとなった。またヒトARDS症例の剖検肺でもFas, FasLなどが高濃度で発現していることを示した。 2)急性肺傷害に関する基礎的実験 これまで報告したとおり現状ではmutant mouseの供給が困難であったため、対象をLPS投与マウスに変更した。基本的は、Fas, FasL, perforin, granzymeなどのアポトーシス関連因子は強く発現した。また上記の臨床結果を参考に、急性肺傷害に伴うHMGB1の発現をRT-PCR、免疫染色等で検討したところ、HMGB1は肺胞マクロファージを中心とした炎症細胞に強く発現し肺傷害の病態に深く関与していることが示唆された。一方、アポトーシスに陥った細胞群ではHMGB1は核内に閉じこめられた状況に陥っておりこのような所見から急性肺障害におけるアポトーシスは細胞傷害に単に関わっているだけでなく、生体防御反応、また組織修復反応にも強く関与していることが示された。
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