研究概要 |
平成14年度は、マイクロベッセル観察システムを用いてラット脳新皮質内の微小血管を観察し、高炭酸ガスによる血管弛緩反応のメカニズムとこれら血管に及ぼす局所麻酔薬の影響を薬理学的に検討した。 1)ハロセン麻酔下にウィスターラットの脳を摘出し,4℃の人工脳脊髄液中でビブラトームを用いて厚さ約150μmの新皮質を含む脳スライス標本を作成した。この標本を酸素93%+炭酸ガス7%で通気した37℃人工脳脊髄液で満たした観察用チャンバーに入れ、顕微鏡にて脳実質内の微小血管を観察した。血管平滑筋が壁在する内径5-10μmの微小血管を観察した。顕微鏡画像はビデオカメラで取り込み、デジタル変換した後コンピュータ画面上で解析ソフトを用いて血管径を計測した。 2)プロスタグランディンF_<2α>で脳スライス標本内動脈を収縮させ。酸素90%+炭酸ガス10%(PCO_2=50mmHg)の通気を行い、高炭酸ガスの状態にした。高炭酸ガス,選択的ATP感受性カリウムチャネル開口薬であるレブクロマカリム,および内向き整流性カリウムチャネル開口薬KCIによる血管拡張反応を観察し,局所麻酔薬リドカインが及ぼす作用を検討した.リドカインは,レブクロマカリムによる拡張反応を抑制したが,KCIによる血管拡張反応には影響しなかった.この局所麻酔薬の高炭酸ガスによる血管拡張に及ぼす作用は現在検討中である.以上の結果から,リドカインは,ATP感受性カリウムチャネルを介する脳実質内微小血管拡張作用を抑制するが,内向き整流性カリウムチャネルによる拡張反応には影響しないことがを明らかになった。 今後は,一酸化窒素合成酵素遺伝子欠損マウスでの高炭酸ガスによる脳実質内微小血管拡張反応を観察し,それらに各種麻酔薬が及ぼす影響について検討する予定である。
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