シスチン尿症の原因遺伝子として1992年にrBAT遺伝子が同定された。我々は患者43名よりI型シスチン尿症の原因遺伝子rBATの新しい5つの変異を見出した。1999年に、我々は非I型シスチン尿症の原因遺伝子BAT1を同定した。BAT1蛋白は、487個のアミノ酸をコードする約40kDaの蛋白である。また、ヒトのBAT1 mRNAは腎臓の近位尿細管の管腔側に存在することを示した。機能実験により、rBATおよびBAT1遺伝子がコードする2つの分子が、2量体をなして膜蛋白として尿細管細胞の管腔側細胞膜上に配置され、シスチントランスポーターとして働くと考えられた。患者41名を対象としてBAT1につき遺伝子解析を行ったところ、7つの変異が見出された。なお、2例では両者とも変異が認められなかった。BAT1遺伝子のmissense mutation P482L(PRO 482 to LEU)は35例中の31例(約90%)と高頻度に検出された。BAT1蛋白の細胞質内C末端、すなわちstop codonのわずか6個前の変異によってシスチン吸収機能の低下が起きており、蛋白そのものの構造が変化したというより調節因子との結合が阻害されたと考えられた。これにより管腔側細胞膜へのsorting異常が引き起こされていることが判明した。P482L変異は欧米人の解析症例には全く見られておらず、日本人におけるシスチン尿症のhot spotであることが示された。遺伝子変異と臨床所見の関連を検討したところ、I型シスチン尿症は非I型シスチン症例よりも再発頻度が低く、尿中シスチン排泄量も低値であった。遺伝子診断による重症度予測法の確立は既治療例の再発予防のみならず未発症保因者の発症予防という形で臨床にフィードバックすることが可能となる。
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