泌尿器科進行癌における血管内皮細胞特異的な抗血管新生治療の分子標的の同定

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470337
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 神田 滋 長崎大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20244048)
• 研究分担者: 野俣 浩一郎 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (80189430) ; 金武 洋 長崎大学, 医学部, 教授 (50100839)
• キーワード: 血管新生 / 血管内皮細胞 / FGF / c-Fyn / Tie2 / 管腔形成 / シグナル伝達

研究概要

1.血管内皮細胞特異的な分子標的同定のためのストラテジー
癌の増殖は血管新生依存性であり、血管新生の主役は血管内皮細胞である。血管新生には血管基底膜の酵素による消化、血管内皮細胞の遊走、増殖、管腔形成のステップがあるが、前3者が癌細胞や血球系細胞でも認められるのに比べ、管腔形成は血管内皮細胞に比較的特異的である。そこで、管腔形成を制御するシグナル伝達経路をまず検討した。その結果、(a)強力な血管新生分子である繊維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)による管腔形成は、FGF受容体1を介したシグナルで制御され、FGF受容体2ではシグナルが入らないこと、(b)管腔形成にはc-Fynチロシンキナーゼ活性が必要であること、(c)Tie2受容体のシグナルでも管腔形成を生じるが、この場合もc-Fynキナーゼ活性が必要であること、つまり増殖因子受容体チロシンキナーゼの下流ではc-Fynが共通の分子として管腔形成に関与していることが示唆された。
2.血管内皮細胞特異的な、c-Fyn結合蛋白の検索
現在酵母のTwo-Hybrid Systemによって、c-Fynと結合する、つまり、c-Fynの下流の分子である可能性のある蛋白を、血管内皮細胞由来のcDNA libraryからcloning中である。
3.c-Fyn以外の、管腔形成制御に関するシグナル伝達経路の同定
FGFやTie2受容体以外に、管腔形成を制御する受容体を2つ同定したので、そのメカニズムについても分子レベルで検討中である。この因子の受容体はチロシンキナーゼではないため、c-Fynが共通分子として作用するのか、別の分子が重要なのかを検討したい。

研究成果

• [文献書誌] Takefumi Shono, Hiroshi Kanetake, Shigeru Kanda: "Activation of mitogen-activated protein kinase within focal adhesions isinvolved in chemotaxis towards FGF-2 by murine brain capillaryendothelial cells"Experimental Cell Research. 264. 275-283 (2001)
• [文献書誌] Takefumi Shono, Yasushi Mochizuki, Hiroshi Kanetake, Shigeru Kanda: "Inhibition of FGF-2-mediated chemotaxis of murine brain capillary endothelial cells by cyclic RGDfV peptide through blocking redistrubution of c-Src into focal adhesions"Experimental Cell Research. 266. 169-176 (2001)
• [文献書誌] Takao Nakamura, Yasushi Mochizuki, Hiroshi Kanetake, Shigeru Kanda: "Signals via FGF receptor 2 regulate migration of endothelial cells"Biochemical and Biophysical Research Communications. 289. 801-806 (2001)
• [文献書誌] Yasushi Mochizuki, Takao Nakamura, Hiroshi Kanetake, Shigeru Kanda: "Angiopoietin 2 stimulates migration and tube-like structure formation of murine brain capillary endothelial cells through c-Fes and c-Fyn"Journal of Cell Science. 115. 175-183 (2002)
• [文献書誌] Satoshi Tsuda, Akira Ohtsuru, Shunichi Yamashita, Hiroshi Kanetake, Shigeru Kanda: "Role of c-Fyn in FGF-2 mediated tube-like structure formation by murine brain capillary endothelial cells"Biochemical and Biophysical Research Communications. 290. 1354-1360 (2002)
• [文献書誌] 神田 滋, 野俣浩一郎, 酒井秀樹, 古賀成彦, 金武 洋: "血管新生の制御とシグナル伝達"西日本必尿器科. 63. 165-175 (2001)
• [文献書誌] 神田 滋, 金武 洋: "先端医療シリーズ13・腎臓病 腎臓病の最新医療"荒川正昭, 小磯謙吉, 浅野 泰編 先端医療技術研究所(東京). 6 (2001)