研究概要 |
蛋白質SerおよびThr残基のリン酸化が細胞増殖に関与している。卵巣癌細胞の形質膜および細胞質にSer/Thrホスファターゼ(protein phosphat ase type 2A, PP2A)が活性および蛋白レベルで検出できた。細胞をオカダ酸あるいはNaFでインキュベートすると濃度依存症に1)形質膜PP2Aが対照の90%にまで抑制、2)アポトーシスが20%に生じ、3)細胞数は20%減少した。ゴナドトロピン放出因子(GnRH)は1)対照と比し細胞数を20%減少したが、2)形質膜PP2Aを最大1.5倍に促進し、3)アポトーシスの亢進は生じなかった。卵巣癌細胞でもこのPP2A-アポトーシス系が機能していることが確認できた。しかし、形質膜PP2Aを活性化するGnRHは細胞増殖を抑制するにもかかわらず、アポトーシスを亢進しなかった。 胎盤は血管が豊富な臓器の一つで、胎盤の機能や生長に血管新生が関与していると考えられる。胎盤に発現している血管新生因子はVEGF,basic FGF,IL-1,TGF-β,TNF-α,IL-6,IL-8,PDGF,HGFなどである。このうちエストロゲンとリンクしているVEGF(特にVEGF165というアイソフォーム)とbasic FGFのみが妊娠週数や胎盤重量とともにアップレギュレーションされており、胎盤の機能や生長に重要な役割を果たしていると考えられた。 Genistein, daidzeinなどの植物性エストロゲンの中には、SERMsと同様に臓器特異性に抗エストロゲン作用を示すものがあることが判明した。Genistein, daidzeinは内膜発癌に対して、抑制的に作用し、腺癌発生頻度を減少せしめ、その作用機序との関連が示唆された。また、その配糖体であるgenistin, daizinに関しても抗エストロゲン作用を示し、COX-1発現には影響を与えず、COX-2発現を有意に抑制した。 遺伝子組み替えアデノウイルスを作成し、PTEN-nullの子宮内膜癌細胞イシカワ株に感染させ、遺伝子導入し、PTEN発現亜株を作成した。PTEN導入細胞では増殖因子のうちEGF,IGF-IではPTEN発現細胞で明らかな感受性の増強が見られ、EGFの培地添加によってリン酸化Aktの増加が観察され、PIP3/Aktのシグナル伝達系がEGFによって活性化された結果であること、ERβの発現の増加は観察されるものの、リン酸化ERβの発現量には変化はなく、一方、ERαはPTEN導入によって総量の変化はないものの、リン酸化ERαは減少し、PTENがエストロゲン受容体の機能や発現量に影響を与えていることが明らかとなった。
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