Mac25(最近、IGF binding protein-related protein 1として分類された)の機能解析を行うためのリコンビナントMac25蛋白の生産と子宮細胞に対する作用の検討、さらに子宮内膜細胞株の樹立とin vitro着床モデル系の確立の準備を主に進めた。先ず、リコンビナント蛋白のin vitro発現・精製と着床前子宮由来の内膜細胞の増殖に対する影響を検討した。全長mac25cDNAをFlagとhistidine6個の残基からなるtagをコードした発現ベクターpSRαCHFXに組み込み、COS7細胞を用いてN末端またはC末端にtagを付加したリコンビナントmac25蛋白質(rmac25)と、tagを付加しないもの(3種類)を作成した。N末端のtag付加rmac25は、NTAカラムによる粗精製後、特異性の高いanti-Flag M2カラムでアフィニティー精製を行った。得られた標品の活性を、FACSを用いたリガンド結合実験で確認した後に、精製したrmac25を用いて、着床前日のラットの初代培養子宮細胞とBALB・3T3細胞の増殖に及ぼす作用を検討した。即ち、0.1%血清含有培地中で着床成立前における役割が示唆されているインスリン様増殖因子・IGF-Iの非存在下と存在下でrmac25を添加し、細胞数の変化を測定した。mac25単独の子宮細胞に対する効果は認められなかった。しかし、培養液中にIGF-Iを添加すると細胞数は増加したが、rmac25はその増殖促進作用を阻害した。同様の抑制効果は他の2種のrmac25標品でも認められた。以上の結果より、着床直前の子宮細胞においてmac25は、IGF-Iの細胞増殖促進効果を阻害することが明かとなった。一方、BALB・3T3細胞においては、rmac25は細胞増殖を促進した。これらの結果とmac25産生調節に関する検討結果より、mac25は主に着床準備に必須であるプロゲステロンにより促進的調節を受け、着床周辺期に子宮筋層側の内膜間質細胞で発現を上昇させる因子であり、子宮の胞胚受容能獲得に役割をもつことが報告されているIGFと相互作用することが示唆された。子宮内膜細胞株(上皮・間質細胞)の作製実験に関しては、今年度はin vitroでの着床・脱落膜化モデルの検討をための子宮上皮細胞と間質細胞の細胞株を樹立することができた。
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