昨年度調製したリコンビナントMac25蛋白質の生理活性を引き続き検討すると同時に、アデノウィルスベクターの調製とそのベクターを用い着床過程の子宮内でMac25を過剰発現させた場合の着床と脱落膜化への影響の検討を計画した。 1.Mac25発現ウィルスの子宮内膜における発現を試みるためAdEasy Vector Systemを用いて組換えMac25アデノウィルスベクターを調製した。全長mac25cDNAを含むDNA断片をTransfer Vectorに組み込み、ベクターを調製、Mac25蛋白質発現を確認した後に、直線化ベクターをpAdEasy-1 Vectorと共にE.coli(BJ5183)へトランスフォームした。相同組換えが確認できた組換えDNAをPacIで切断し、HEK293細胞へ導入して組換えウィルスを産生させた。精製し力価を測定した組換えウィルスを着床受容期のラット子宮内に投与し、Mac25の子宮での過剰発現を試みると同時に、着床と脱落膜化への影響を検討した。組換えウィルス注入部位での着床数は促進される傾向にあった。しかし、発現効率が悪いため現在、実験系をマウスに移行している。 2.In vitroヒト子宮内膜間質細胞の脱落膜化モデル系を確立した。このモデル系で培養6日目以降に形態学的変化と顕著なプロラクチンとIGF binding protein-1の増加を認めた。本培養系でのMac25発現アデノウイルスの影響をリコンビナント蛋白及び抗体の作用と合わせて検討中である。着床直前の妊娠5日目由来ラット子宮内膜細胞の増殖に対するMac25の作用を再検討し、IGF-Iの増殖刺激作用をMac25は10〜100ng/mLの用量間で用量依存的に抑制することを確認した。 3.着床機構に関与することが示唆されているプロスタサイクリン(PGI_2)産生への影響を調べた。培養子宮筋細胞系においてMac25(50ng/mL以上)の添加でPGI_2レベルは有意に上昇した。比較として用いたホルボルエステルでもそのレベルは増加した。このMac25によるPGI_2レベルの高進作用は、IGF-I存在下では増強された。PGI_2 synthase mRNA発現が着床部位周辺の間質細胞や子宮筋層であることから考えるとMac25はパラクライン作用によりPGI_2産生を上昇させ、着床準備に関与することが示唆される。
|