研究概要 |
アデノウイルスベクター(Ad-mac)処置によるmac25高発現状態における子宮細胞の着床関連因子の変動と共に,子宮内膜細胞でのmac25高発現の脱落膜化への影響を検討した。 1.昨年度調製したAd-macのmac25蛋白質の分泌能をHEK293細胞と子宮内膜間質細胞で確認した後,妊娠ラット4日目と着床後の8日目の子宮から分離した培養子宮内膜間質細胞にAd-mac(重複感染度:46.9MOI)を72時間作用させた。COX-IIを含めたPG生成酵素のmRNA発現及びサイトカインmRNA発現の変動を検討したところ,Ad-mac処置によりCOX-II, microsome PGE synthase(mPGES)のmRNA発現レベルは上昇した。しかし,調査した各種サイトカイン発現に対しては影響がなかった。なお,mac25非発現のウイルス処置は何ら影響を及ぼさなかった。精製リコンビナントmac25(rmac25)蛋白質を用いて同様な検討を行い,COX-II発現の上昇とメディウム中PGI_2レベルの上昇を認めた。 2.昨年度確立したヒト子宮内膜間質細胞株を用いたdibutyryladenosine(db)-cAMP添加により誘導できる脱落膜化モデルを用い,Ad-mac25処置の影響を解析した。脱落膜化に伴い脱落膜化マーカーとしてのIGFBP-1分泌量は,増加した。このモデルでのAd-mac処置はIGFBP-1分泌レベルを顕著に低下させた。同様な効果はrmac25蛋白質の添加でも確認できた。PGI_2とPGE_2の分泌量はAd-mab処置でラット子宮細胞で得られた結果と同様に増加した。間質細胞株の内因性mac25発現量は,脱落膜化の進行と共に低下した。ラットの人為的in vivo脱落膜化モデルでの脱落膜化に伴うmac25発現の変化も検討したところ,脱落膜化刺激後の脱落膜腫の形成過程でmac25発現は著しく減少した。 以上より,mac25は妊娠子宮内膜においてCOX-II、mPGES発現の上昇を伴って、PGI_2、PGE_2産生を刺激した結果と内因性mac25発現部位が子宮内膜間質細胞でありその増殖を細胞周期のG1期に停滞させる作用も有している観察結果からmac25は着床誘起と脱落膜開始に向けた子宮内膜の準備・調製に多彩な役割をもつことが推察された。
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