研究概要 |
ラット着床成立時の子宮で誘導されることが判明したmac25の着床過程での発現とその生理活性について検討した。内因性mac25は着床間(非着床)部位の筋層に近い内膜間質細胞に局在しており、着床付近で発現上昇がみられた。着床遅延モデル並びに人為的脱落膜化モデルを用いた検討よりmac25発現は、脱落膜腫の形成過程で著しく減少することを明かにした。着床前日の培養子宮内膜細胞でのリコンビナントmac25処置はIGF-Iの増殖促進作用を抑制した。また、その抑制作用はG1期停滞作用によるものであることを見い出した。子宮筋細胞においてmac25はPGI_2産生を促進した。mac25高発現アデノウイルスベクター(Ad-mac)を構築し,このベクターはmac25蛋白質を発現することが可能なベクターであることを確認した。着床前のラット子宮内膜間質細胞へのAd-mac処置によりmac25が高度に発現され、この時の着床関連因子であるCOX-IIとPGE合成酵素の発現は顕著な上昇を示した。mac25蛋白質の添加でもCOX-II発現の上昇とPGI_2,PGE_2の分泌量の上昇がみられた。脱落膜細胞ではこのような効果は認められなかった。ヒト子宮内膜間質細胞株におけるジブチリル(db)-cAMP添加による脱落膜化の誘起過程でAd-mac処置は脱落膜化を抑制した。mac25蛋白質添加でもこの抑制効果が観察でき,ラットでの結果と同様にPGI_2とPGE_25の分泌量は上昇した。以上、着床成立時に発現を上昇させるIGF結合蛋白質関連蛋白であるmac25は、着床に関連した子宮機能の調節においてIGF作用を調節すると共にCOX-II、PG産生系の調節作用と脱落膜化の抑制を介して着床に関与することが示唆された。オートクライン・パラクライン的にmac25は着床誘起と脱落膜開始に向けた子宮内環境の準備に役割をもつと考えられる。
|