血管新生がどのようなメカニズムで行われているのか、すなわち血管系の構築を決める設計図はあるのか、そこに何か共通した法則はあるのかといった問題が古くから議論されてきた。生体をひとつの統合されたシステムとして見る生体工学においては、酸素を要している組織(例えば低酸素状態)に最も効率良く酸素供給ができる血管系の最適分岐構造モデルが提唱されている。本研究ではその見地から、血行力学的応力と組織酸素分圧に起因する血管新生メカニズムを解明するべく実験を進めている。 現時点までにラットの大腿動静脈を吻合してシャントを作成することで、血管内の血流を著明に増加(正常の10倍以上)させることができるラット生体内血流負荷-血管新生モデルを開発した。このモデルにパルスドップラー血流計とデジタル3次元超音波変位測定システムのクリスタルセンサー(直径0.7mm)を血管壁に装着する技術を確立することにより長期にわたり慢性的に血行動態を計測するごとに成功した。新生血管の構築に関してはmicroangiographyと微小血管網の3次元鋳型標本をコンピュータ画像処理解析システムを用いて定量することで評価した。Shear stressなど血行力学的応力の負荷が血管新生に促進的に影響するという傍証を得た。 また生体顕微鏡下でマウス背部皮弁の微小循環を可視化できる小型chamberを設計試作し、新しい虚血再灌流障害実験モデルを提唱した。このモデルではin vivoで血管新生を惹起することができる。同モデルを発展させることで微小循環血行動態、組織酸素分圧、血管新生の関係を解析している。
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