研究概要 |
唾液腺における分泌は細胞外からの情報受容に引き続き,細胞内シグナルを介し,分泌に至る。唾液腺における分泌関連分子の相互作用の研究において,平成14年度には次のことを明らかにした。1)ラット耳下腺腺房細胞においてムスカリン受容体活性化は水やイオン分泌を引き起こすが,この受容体は三量体GTP結合タンパク質と共役し,ホスホリパーゼCを活性化し,Ca^<2+>動態に関わるイノシトール三リン酸(IP_3)を生成する。スフィンゴ脂質の1つスフィンゴシンがGTPγS刺激によるIP_3生成を抑制することを明らかにした。2)ラット耳下腺腺房細胞のアミラーゼ分泌とホスホリパーゼDについて検討し,βアドレナリンおよびムスカリン性受容体刺激によるアミラーゼ分泌調節にホスホリパーゼDが関わっていることを明らかにした。しかし,以前にわれわれが報告した低分子量GTP結合タンパク質の1つArfは,この調節には関与しないことが示唆された。3)低分子量GTP結合タンパク質の1つ,Rhoについて検討し,ラット耳下腺腺房細胞において,RhoAがβアドレナリン受容体刺激によるアミラーゼの開口放出に関与することを明らかにした。また,RhoAの下流にRhoキナーゼが存在することも明らかにした。4)ウサギ顎下腺腺房細胞において,一酸化窒素(NO)を介したcyclic GMPシグナルが存在することを明らかにした。5)ウサギ耳下腺腺房細胞におけるNOの役割を検討し,腺房細胞で産生されたNOは神経での神経伝達物質を介してアミラーゼ分泌調節に関わることが示唆された。6)ラット舌下腺におけるSNAREタンパク質について検討し,シンタキシン1Aが存在することをウエスタンブロットおよびノーザンブロット解析により明らかにし,細胞間接着部位に局在することを形態学的に明らかにした。
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