研究概要 |
p300は、転写仲介因子としてクロマチンの構造変換をおこなうことにより、様々な遺伝子の転写調節に関与している。本研究は、癌抑制遺伝子としてのp300の役割を明らかにするとともに、口腔癌の癌化機構を転写調節レベルで解明することを目的として研究をおこなった。 その結果、口腔癌1株を含む7株のヒト癌細胞において、正常対立遺伝子の不活性化を伴うp300遺伝子の突然変異を見出した(Ohshima, et al. 2001,Suganuma et al. 2003)。さらに、それらの細胞株を用いて、p300には癌細胞の増殖を抑制する機能があること、p300の変異により上皮細胞の増殖を抑制するTGFβに対する応答性が失われることを明らかにした(Suganuma et al. 2003)。 さらに口腔癌の癌化機構を明らかにするため、RB癌抑制遺伝子産物の制御機構、および細胞増殖に関与する遺伝子のクロマチンDNA.と核マトリクスとの相互作用の解析をおこなった。その結果、1.RBのリン酸化に関与するサイクリンD1の核移行抑制が終末分化細胞(心筋、神経)の増殖停止と生存に重要であることを明かにした(Tamamori-Adachi et al. 2003、Sumrejkanchanakij et al. 2003)。2.核マトリクス結合タンパク質である転写調節因子E2FBP1/DRIL1が、p53癌抑制遺伝子によって制御されるp53標的遺伝子の一つであることを明らかにした(Ma et al. 2003)。3.RBによって制御されるE2F標的遺伝子の転写抑制と活性化が、異なる転写制御複合体のクロマチンDNAへの結合によって制御されていることを明らかにした(Araki et al. 2003)。
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