研究概要 |
平成14年度においては,提出した研究実施計画に基づき,抗菌性モノマーMDPBを配合した接着システムの浸透による根面う蝕の進行抑制法に関して,以下の3項目の実験を行った。 1.乳酸ゲルによる人工う蝕モデルでの脱灰進行抑制効果の検討 ヒト抜去歯の歯根に直径4mmの開窓部を設け,pH4.0の乳酸ゲルに37℃下で2週間浸漬して人工脱灰病変を形成した。病変部にMDPB配合試作接着システムを浸透硬化させ,再度乳酸ゲルに2週間浸漬した後,歯牙を包埋・薄切し,マイクロラジオグラフィーによる観察と脱灰深さの測定を行った。その結果,MDPB配合プライマーとMDPB配合ボンディングレジンの適用により,酸による脱灰の進行が完全に抑制されることが分かった。 2.脱灰象牙質中での接着システムの硬化特性の評価 ヒト抜去歯の歯根に直径4mmの開窓部を設け,pH4.0の乳酸ゲルに37℃下で4週間浸漬して作成した人工脱灰病変に,MDPB配合接着システムを浸透硬化させた後,試料をそのまま,あるいは半切して通法に従って固定・脱水・乾燥し,走査型電子顕微鏡を用いて表面の封鎖状態を観察した。その結果,ボンディングレジンが約50μmの厚さで表面に存在し,病変全面が緊密に封鎖されている状態が確認された。すなわち,MDPB配合接着システムが脱灰病変においても十分な硬化性を有し,病巣の封鎖に効果的であることが分かった。 3.共焦点レーザー顕微鏡(CSLM)による自然う蝕病巣への浸透性の評価 根面う蝕を有する抜去歯のう蝕病変部分にRhodamine Bを添加したMDPB配合プライマーを浸透させ,硬組織切断器で歯牙を半切して,CSLMを用いて浸透性の評価を行った。その結果,MDPB配合プライマーは500μm以上の深さまで浸透し,表面の濃い色を呈する部分を越えてほぼ着色部の前縁に到達していることが確認された。
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