研究概要 |
平成15年度においては,提出した研究実施計画に基づき,抗菌性モノマーMDPBを配合した接着システムの浸透による根面う蝕の進行抑制法に関して,以下の実験を行った。 1.Streptococcus mutansによる人工う蝕モデルでの脱灰進行抑制効果の検討 ヒト抜去歯の歯根面に開窓部を設けた試料を,S.mutansを接種した1%スクロース含有BHI液体培地に浸漬して2週間培養し人工根面う蝕を作成した。う蝕病変部に各種接着システムを適用し,再度S.mutans菌液中で2週間培養した後,マイクロラジオグラフィーによる観察と脱灰深さの測定を行った。その結果,MDPB配合プライマーとLBボンドの適用により脱灰の進行が完全に抑制されることが分かった。 2.脱灰象牙質浸透硬化後の抗菌性の検討 ヒト抜去歯の歯根部より切り出した象牙質片を乳酸ゲル中に2週間浸漬して脱灰した後,表面に各種接着システムを適用した。S.mutansを含む1%スクロース含有BHI液体培地中に試片を懸垂し,37℃で24時間培養後,プラーク付着の状態をSEMにて観察した。その結果,MDPB配合プライマーとMDPB配合LBボンドを適用した群では,他の市販システムと比較してプラークおよび菌の付着がごくわずかであり,表面に固定化された抗菌成分による菌の付着・増殖抑制効果が発現されることが分かった。 3.共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による臨床でのう蝕病巣への浸透性の評価 臨床から採取した抜去歯の根面う蝕病変部分にRhodamine Bを添加したMDPB配合プライマーを浸透させ,硬組織切断器で直ちに半切して,CLSMを用いて断面の観察を行った。その結果,MDPB配合プライマーは,表層の濃い着色部分と深部の淡い着色部分を越えて,う蝕前縁に相当する透明な層近くまで到達しており,う蝕病巣のほぼ全層にわたって浸透することが明らかとなった。
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