研究概要 |
本研究は,抗菌性レジンを用いた新たな根面う蝕マネージメントオプションの確立を目的として,抗菌性接着システムの適用による根面う蝕の抑制効果について基礎的な検討を行ったものである。すなわち,抗菌性モノマーmethacryloyloxydodecylpyridinium bromide(MDPB)を配合した接着システムを浸透・硬化させてう蝕の進行を抑制する方法に関して,その有効性を検索するためのin vitro系での各種の実験を行い,次のような結果を得た。 1.阻止斑形成試験,MIC/MBC測定による抗菌力の評価を行ったところ,現在の市販接着システムには,口腔細菌に対して明瞭な抗菌性を備えているものは認められなかった。 2.細菌を含む脱灰象牙質モデルを用いた実験において,4%MDPB配合プライマーの殺菌効果は市販材料よりも有意に強く,その適用により脱灰象牙質中の細菌が完全に殺菌された。 3.MDPB配合プライマーは,人工的に作成した脱灰病変に十分深くまで浸透し,また実際の歯に発生した臨床での根面う蝕病巣に対しても十分な浸透能力を有することが確認された。 4.乳酸ゲルおよびStreptococcus mutansによる脱灰試験において,MDPB配合接着システムの適用により脱灰の進行が完全に抑制された。また,MDPB配合接着システム適用群では,病巣の表面全体が十分に硬化したレジンで被覆されていた。 5.MDPB配合接着システムを浸透・硬化させた病巣表面では,市販システムを適用した場合と比較してプラーク付着量が少なく,とくにMDPB配合ボンディングレジンの使用によりプラークの付着が強く抑制された。 以上のことより,MDPB配合接着システムの適用が活動性の根面う蝕病変の進行抑制に有効であり,本法が根面う蝕のマネージメントに有用である可能性が強く示唆された。
|