研究概要 |
本年度は、齲蝕原性細菌の発育・増殖に及ぼす各種キトサンの影響を検討した。齲蝕原性細菌として、本学部口腔細菌学講座の保有するミュータンス連鎖球菌を用い、種々の脱アセチル化度、分子量、濃度、pHのキトサン反応液中で1時間(37℃)培養した。1/1000まで希釈ののちTodd Hewitt大豆寒天培地上に播種した。37℃で好気的に24時間培養したのち、コロニー数をコントロールと対比させた。甲陽ケミカル社のSK-2(脱アセチル化度:80%、分子量10,000,)を反応時濃度4%とし、pHを6.0、6.5、7.0、7.4に調整ののち抑制効果を検討した結果、いずれもコントロールに対する比率が0.5〜1.0の間となり有効性が認められなかった。次に低分子量のキトサンに対する効果を検討するため、本年度より共同研究を開始している韓国釜慶大学校化学講座(金 世権教授)から、分子量1,000〜5,000、5,000〜10,000のキトサンオリゴ糖を入手し、同様な抑制実験を行った。その結果、両分子量とも、またpH6.5、7.0とも反応時濃度1%で抑制効果を認めることができなかった。そこで、最後に歯質を脱灰しない臨界pH値である6.5において、甲陽ケミカル社から提供されたキトサンオリゴマー(2〜8糖)がコントロールと比べて比率が0.5以下となり抑制効果を確認できた。今後は、抑制実験の精度を向上させるため、嫌気的に培養し、同時に歯磨剤への実用化も考慮して実験を進めていく予定である。
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