研究概要 |
クレンチングやブラキシズム等の口腔悪習癖は顎関節症の寄与因子であることが知られている.しかしながら,これらの口腔悪習癖を抑制する手段は確立されておらず,本人が日常のクレンチングを自覚していない場合も少なくない.そこで本研究では,筋痛患者に対する日常生活下でのバイオフィードバック訓練の臨床応用に向け,咀嚼等の機能的筋活動と口腔悪習癖による非機能的筋活動を識別する閾値の設定方法を検討した. 昨年度開発をおこなった,小型軽量化した携帯型EMGバイオフィードバック装置を用いて,顎関節症状の無い健常者34名(男性18名,女性16名,平均年齢26.6±2.7歳)を被験者として,日常生活環境下での側頭筋筋活動量(EMG)を5時間連続記録した.測定開始時と5時間後に以下の条件で機能運動,非機能運動を行わせた.最大咬みしめを100%MBF咬合力に設定し,10,30,50%MBF咬合力による持続咬みしめを非機能運動,ガム,煎餅咀嚼を機能運動とした.最大咬みしめ時筋活動量を100%EMG閾値レベルとし,10,20,30%EMG閾値レベルの3段階およびEMG閾値持続時間1〜9秒の9段階を組合せた27通りのパラメータに対し,機能的筋活動と非機能的筋活動を識別する上で最適な組合せを求め,測定開始時と5時間後の経時的安定性について検討した.その結果,測定開始時に設定した30,50%MBF咬合力と機能運動を識別する閾値が5時間後まで有効な被験者は34名中30名(90.9%)であり,10%MBF咬合力と機能運動を識別する閾値が5時間後まで有効な被験者は25名(73.5%)であった.また,それぞれの咬みしめ条件において,測定開始時と5時間後では高い相関が認められた. 次年度は,クレンチングを自覚する咀嚼筋痛患者を対象に閾値設定を検討する予定である。 結論として,EMG閾値レベルとEMG閾値持続時間の組合せにより閾値の設定が可能であることが示唆された.
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