研究概要 |
平成15年度はクレンチングの特性に着目し,筋活動量と筋活動持続時間を組み合わせた筋電図(EMG)バイオフィードバック(BF)療法のための有効な閾値設定について,クレンチング習癖者を対象として検討することを目的とした.咀嚼時など機能運動とクレンチングなどの非機能運動のEMGが識別可能となりうる閾値を有効な閾値とみなした.この閾値設定が可能となることは効率の良いBF療法が可能となることを意味する. 被験者は18人(男性7名,女性11名,平均年齢36.2±14.8歳)で咀嚼筋に痛みや疲労感があり,クレンチングの自覚のある者とした.これらの被験者に対し前年度に報告した携帯型EMG-BF装置のデータロガー機能を利用して,日常生活環境下における5時間連続のEMG計測を行った. 最大かみしめを100%Maximum Voluntary Contraction(MVC)とした場合,設定した3段階の筋活動量(10,20,30%MVC)と筋活動持続時間(1〜9s)を組み合わせた27通りの設定閾値について適中精度を調べた.その結果,30%MVC-EMGで筋活動持続時間2sの組み合わせのときの閾値が81.3%と最も高い適中精度を示した.しかし,この閾値が実際に有効な閾値として検出された被験者は18人中9人(50%)であった.このことから,全員へ共通な閾値の設定を行うよりも,個人ごとにベースラインデータを確認し,その傾向やクレンチングの病態を把握したうえで閾値設定を行うことが望ましいといえる.そこで個人ごとに妥当性ある閾値設定を試みたところ,18人中16人(88.8%)に対し有効な閾値の設定が可能であった. 本実験の結果から,筋活動量と筋活動持続時間を組み合わせた閾値を設定することで,日常生活環境下において効率の良いEMG-BF療法が行えることが示唆された.
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