研究概要 |
本研究では,脱灰象牙質のプライミング材として実績のあるN-メタクリロイル-ω-アミノ酸(NMωA)とN-メタクリロイルアルキルフォスフォン酸(NMP)からなる新規セルフエッチングプライマーシステムを開発することを目的としている. 本年度は,メチレン鎖長が1(N-メタクリロイルグリシン:NMGly),2(N-メタクリロイ-β-アラニン:NMβAla)および3(N-メタクリロイル吉草酸:NMVa)のNMωAを合成し,NMR法を用いてNMωAとヒドロキシアパタイトまたは象牙質とを水溶液中に共存させ,両者の相互作用の詳細について明らかにするとともに,NMωAを水に溶解して調製したNMωAプライマーを歯質に作用させた場合のコンポジットレジンの接着強さを測定し,NMωAのセルフエッチングプライマーとしての有用性を検討した. 5mol%NMωAプライマー溶液中にとヒドロキシアパタイトまたは象牙質とを共存させ,両者の相互作用の詳細についてNMR法を用いて検討した.その結果,NMωA分子内カルボキシル基は,エナメル質およよび象牙質に含まれるCaと反応し,エナメル質より象牙質と強く相互作用を起こすこと,さらに両者の相互作用の強さはNMωA分子内カルボキシル基の解離平衡pHが低いほど,増大することがわかった. つぎに,5mol%NMωAプライマー溶液を歯質に作用させた場合のレジンの接着強さを測定し,NMωAのメチレン鎖長が接着強さにおよぼす影響を検討した.その結果,エナメル質および象牙質と強く相互作用を起こすNMwAほど高い接着強さを与えた.しかし,メチレン鎖長が2のNMβAlaはエナメル質と相互作用を起こしているにも拘わらず,エナメル質にはほとんど接着しなかった.
|