研究概要 |
本研究は,支台築造を施された失活歯における歯根破折に着目し,種々の種類,材料を使用して支台築造を行った支台歯について,臨床的な機能下においていかなる力学的挙動を示すかシミュレーション実験を行う.すなわち,生体における咬合状態を模した繰返し荷重を負荷した後の各種試料の破折強度を測定し,その後の破折様相を観察することにより,信頼性を増した象牙質接着を積極的に活用した上での最適な支台築造法を検討することが目的である. 試料は,形態による差違を排除するため,ウシ前歯を倣い加工により同一寸法に形成し,各種支台築造を施した後,破折試験に供し,破折強度,あるいは破折様相を検討した.一方,同各種支台築造を施した試料を急速劣化咬合力試験装置(RL-1)に供した.支台築造の条件は,残存歯質高径を0,1,2mmの3条件に対して,金銀パラジウム合金による鋳造支台築造の条件,コンポジットレジン支台築造として,既製ポストを使用しない条件,ステンレス鋼製既製ポストを使用した条件の3条件,計9条件を設定した.繰返し荷重は,37℃水中下で1.0s/回の250N荷重を300,000回負荷した. 結果,残存歯質高径0mmにおいて,繰返し荷重を負荷した場合と負荷しない場合では,レジン支台築造のみの条件で有意に繰返し荷重負荷により破折強度が低下した.また,繰返し荷重後において,レジン支台築造のみの条件は,鋳造支台築造,既製ポスト併用レジン支台築造と比較して,有意に低い破折強度であった.一方,残存歯質高径1mmおよび2mmにおいて,繰返し荷重による破折強度の低下は認められず,破折様相にも有意な差は認められなかった.したがって,残存歯質高径1mmあれば,歯冠修復物の帯環効果により,3条件の支台築造方法の間に差が認められなかったため,臨床的に残存歯質1mmを保存,または他の術式により得ることは重要であることが示唆された.
|