研究概要 |
顎関節疾患は,生体の遺伝的な内的因子と咬合異常などの外的因子の複合的な疾患と位置付けられる.内的因子である,骨粗鬆症などの骨疾患や加齢による顎関節の組織変化とそのメカニズムを明らかにすることは,外的因子を論ずる前に必要不可欠であり,かつ重要である.本研究では,骨粗鬆症モデルマウスの顎および膝関節頭の加齢的組織変化を検証し,骨粗鬆症における両関節頭の加齢的変化を明らかにすることを試みた.モデルマウスには,Senescence-Accelerated Mouseの中のSAMP6(骨粗鬆症モデルマウス)を用い,SAMP6の3ヶ月齢(骨粗鬆症発症前)と8ヶ月齢(発症後)の顎および膝関節頭の病態をSAMR1(コントロールマウス)のそれらと比較した.SAMP6の膝関節頭においては,発症前から関節軟骨層および成長板軟骨層の菲薄化が認められ,関節頭および長管骨体部の骨髄腔の拡大が認められた.発症後ではSAMR1でも骨髄腔の拡大がみられ,加齢に伴う骨の脆弱化が推測されたが,SAMP6では同所見が顕著であった.SAMR1の関節軟骨層は明確であり,成長板軟骨層には骨梁の侵入が認められたのに対し,SAMP6では関節および成長板軟骨層が非薄化していた.SAMP6の顎関節の組織像では,意外なことに,骨粗鬆症発症前と後でSAMR1のそれと顕著な相違を認めなかった.すなはち,関節軟骨層は明瞭であり,関節頭内部の骨梁は強靭で,骨髄腔は極めて狭小であった.以上の結果から,骨粗鬆症マウスでは膝関節頭の形態に異常はないものの,骨髄腔の拡大と平行して関節軟骨と成長板軟骨の劣成長が認められたが,咀嚼により絶えず多方向性のストレスを受ける顎関節頭では形態と組織に異常がなく,同関節頭の特異性が示された.次年度からは生物学的検証を行う予定である.
|