研究概要 |
新規抑制補助刺激分子であるPD-1の2つのリガンドのうち、B7-H1は、癌細胞上にde novoで発現誘導され、抗腫瘍免疫応答にPD-1を介して制御的に作用していることが、マウス口腔原発扁平上皮癌NRS1モデルで明らかになった。また同時に、遺伝子導入により癌細胞上に強発現されたB7-H1は、PD-1非依存的に抗腫瘍免疫増強に働くことも示され,B7-H1分子を介した複雑な免疫制御機構が働いていることが示された。 B7-H1は、癌細胞上に誘導されると共に、樹状細胞(DC)上にももうひとつのPD-1リガンドであるB7-DCと共に誘導される。B7-DCは、B7-H1と異なり、特にDC特異的に発現誘導される。ハプテン抗原刺激マウス所属LNにおいて、皮膚から遊走してきたCD11b^+CD11c^+DCにおいて、B7-DCの発現はCD86強発現細胞において認められた。CD86発現量の低い不完全成熟遊走DCにおいては、B7-H1のみの発現が見られた。また,ハプテン抗原刺激時における抗B7-H1抗体あるいは抗PD-1抗体投与によりハプテン再刺激に対する反応が増強されることから,PD-1:B7-H1経路を介した寛容誘導が関与している可能性が示唆された。 リンパ節好転移性NRS1細胞株をマウス舌下に接種すると、短期間のうちにセンチネルLNにおいてCD11b強陽性の大型細胞が増加し、これらの細胞がCD86およびB7-H1低発現であった。これらの細胞は、原発巣より遊走し々DC様細胞と考えられ、センチネルLNにおいて、免疫寛容に働いている可能性が示唆された。 本研究結果から、センチネルLNにおけるDCが、B7-H1依存的に免疫寛容誘導に働いている可能性が示された。
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