研究概要 |
本年度は前年度の結果を踏まえては、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株における低酸素環境下での癌化学療法の効果について検討を行い、HIF-1αを標的とした分子標的治療の可能性を追求する。 1.各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞株における低酸素環境下での化学療法の効果についての検討 CDDP感受性試験では、HSC2細胞株において各濃度で低酸素環境下でのCDDPに対する高感受性化がみられ、HSC2細胞株においてIC_<50>は7.17μg/mlであるのに対し、低酸素環境下では0.37μg/mlでありCDDP感受性は低酸素環境下では19.3倍とCDDPの感受性が亢進していた。その他の細胞株(HSC3,HSC4,KB,T3M1,KOSC3,SAS,HO1-u1)においても低酸素環境下において各濃度のCDDPに対する感受性が同様に亢進し、IC_<50>の低下が認められた。しかしながら、ADM, BLM,5-FU, TXLにおいては低酸素環境下での抗癌剤高感受性化は認められなかった。 2.低酸素環境下CDDP処理における細胞周期解析 各細胞株においてCDDP処理24時間後にG2-M期に細胞周期の蓄積がみられるが、低酸素環境下でCDDP処理したもののうちHSC2,HSC3,KB, T3M1,SAS細胞株では同様の環境下でCDDP処理後のG2-M期の集積が減少した。また、HSC4,KOSC3,HO-1-u1細胞株ではG2-M期への集積とその割合の増加がみられ、その集積もCDDP処理72時間後まで続いた。 以上、前年度の結果とを含め口腔癌扁平上皮癌のHIF-1α蛋白の発現は癌化学療法におけるCDDP感受性の予知因子になり得ると考えられ、さらに追求することにより口腔癌を含む固形癌のHIF-1αを標的とした分子標的治療が可能になるものと考えられた。
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