研究概要 |
ヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)に対するPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の角化に及ぼす影響について検討を行ってきたが、これらの培地への添加はインボルクリン、CK5,6,18,CK10,CK14の蛋白発現にはほとんど影響を及ぼさず、わずかにインボルクリン、CK5,6,18の蛋白発現増加がみられたのみであった。今回、私たちはNDUSD-1細胞におけるケラチンなどの分化の指標となる蛋白のmRNA発現の変化についてcDNAマイクロアレイを用いて検討した。PTHrPペプチドはN-末端、ヒトPTHrP[1-34](Sigma, St. Louis, MO, USA)を使用した。約4,900の遺伝子の発現プロファイリングをAtlas Glass 1.0,3.8(CLONTECH社)の2つのcDNAマイクロアレイで検討した。GAPDH ; G3PDH、cytoplasmic beta-action(ACTB)、ubiquitinの変化はほとんど認められなかった。PTHrP[1-34]添加によりkeratin, hair, acidic,3Aは1.9倍、keratin 16は1.8倍の増加が認められた。他の26種のkeratinは1.4倍から1.0倍の増減で有意な変化とは考えられなかった。またInvolcurin、loricrin、protein kinase C eta type(NPKC-eta); PKC-Lにおいても有意な変化はみられなかった。KeiserらはヒトケラチノサイトでPTHrPのanti sensemediated irhibitionの結果から内因性のPTHrPがケラチノサイトの分化を亢進している可能性を報告している。今回の結果でPTH/PTHrP typeI receptorの遺伝子発現はないと判定できたのでNDUSD-1細胞では異なるreceptorが存在し、内因性に作用する可能性が残る。NDUSD-1細胞において培地添加のPTHrP[1-34]はケラチンのmRNA発現に影響を及ぼさないようであった。keratin, hair, acidic,3Aとkeratin 16は軽度の増加が認められたが断定はできなかった。今後は内因性の影響の確認が必要である。
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