研究概要 |
現在までPTHrP遺伝子発現によるヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)およびSCC-25細胞の外因性増殖分化調節は困難である結果が出た。そこで本年度は細胞周期関連遺伝子およびhTERTによる遺伝子治療の可能性を探るため基礎実験を行った。細胞は以上のcell lineに追加して正常ヒト表皮角化細胞を用いた。UVC照射およびUVB照射(120,250,600,1200,2500mJ/cm2)を行った。照射後にcDNA合成を行い関連遺伝子の一つrad9のreal-time PCR (RT-PCR)を施行した。またFlow cytometryによる検討も行った。UVBを照射し,6,14,24時間培養した後に細胞を回収した。いずれもUVB照射後細胞内のRad9発現量は増加し,最大で2倍以上の増加が見られた。照射を行った細胞においてG0-G1期で増加,S期とG2+M期で減少を示していた。またWestern blottingによるATR,chk1,cdc25Bの発現レベルとの関係も検討した。Rad9は細胞周期停止とDNAダメージに対するDNA修復に関しており、3'→5'活性が有りsensingと修復への関与が示唆されている。そこでRad9に関連した遺伝子治療の可能性があると考えられる。またhTERT(テロメラーゼ)は老化において中心的な役割を持つ。この機構もゲノム安定性に関与していることが推測される。hTERTとテロメアの密接な関係はgenomic stabilityに関連する遺伝子群の発現変化とゲノムDNAダメージ修復促進に関連していることが最近報告された。私達は口腔角化細胞(老化)のマイクロアレイによる研究で細胞周期関連の遺伝子発現増加を認めた。
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