研究概要 |
頭頸部癌細胞抽出液と培養上清中のO-グリカナーゼのであるα-N-acetylgalactosaminidase(α-Nagalase)活性を検討した.exo-α-NaGalase活性は,正常歯肉線維芽細胞,粘膜上皮細胞(HGK)におけるexo-α-NaGalase活性に比べ高値を示した.特に唾液腺癌細胞(HSG)の細胞抽出液と培養上清中のexo-α-NaGalase活性は,HGKに比べそれぞれ54.5倍(p<0.01),84.0倍(p<0.01)高い活性を示した.イオン交換クロマトグラフィーとゲル濾過クロマトグラフィーを用いて精製したHSG由来α-NaGalaseの分子量は48kDaであった.本酵素は,pH4.2においてexo-α-NaGalase活性とともに,endo-α-NaGalase活性(32.0%),α-galactosidase活性(5.0%)を示した.単球/マクロファージの活性酸素産生能とラテックスビーズの貧食能は,GcMAF存在下で高値を示したが,HSG由来α-NaGalaseで処理したGcMAFを作用させた単球/マクロファージでは有意に低値を示した(p<0.01).PNAを用いてGc proteinの脱糖鎖を検討したところ,HSG由来α-NaGalaseは,exo-とendo-α-NaGalase活性を有することが明らかとなった. 以上の結果から,HSGはexoとendo活性を有するα-NaGalaseの産生能が高く,さらにGcMAFまたはGcMAF前駆物質に作用し,マクロファージの活性酸素産生や食食作用などの生物活性を低下させることが明らかとなった.すなわち,HSG由来α-NaGalaseは,正常細胞のconstitutive enzymeと異なる酵素学的性質を有し,本酵素活性によるGcMAFの脱糖鎖が担癌宿主細胞性免疫低下の一要因であると考えられた.
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