研究概要 |
平成13年度は,LPS,プロテアーゼを塗布することにより,ラット接合上皮の深部増殖と上皮付着部に亀裂を起こさせ,軽度の歯周病モデルを確立することができた。平成14年度では,機械的刺激により,歯肉細胞が最も増殖する刺激条件を決定することを目的とした。 Wistar系雄性ラット130匹の左側上顎第一大臼歯口蓋側歯肉を実験側として用い,反対側同名歯を対照として用いた。電動ブラシ(Twinpecker^<【○!R】>)でラット歯肉に機械的刺激を加えた。機械的刺激は1日1回,0.02Nの力で行い,5,10,20秒間加えた。実験期間は1,3,7,21日とした。各実験期間終了後,ラットを屠殺し,歯と歯肉を固定・脱灰した後,パラフィン包埋した。薄切した標本で,抗proliferating cell nuclear antigen (PCNA)による免疫染色を行った。接合上皮基底細胞および線維芽細胞のPCNA陽性細胞数を計数した。 接合上皮基底細胞では,1回刺激で10,20秒刺激群においてPCNA陽性細胞数が有意に増加し,21日目まで観察された。5秒刺激群では7日目から増加した。線維芽細胞では,3回刺激後から5,10秒刺激群でPCNA陽性細胞数が有意に増加した。20秒刺激では実験期間を通じて変化がなかった。 接合上皮は歯周病において,感染防御の役割を担っている。10,20秒の刺激後翌日から上皮の増殖活性が観察されたことは,機械的刺激の治療効果を知るうえで重要な情報を与えてくれる。1日1回刺激では効果が持続するが,2日に1回では上皮の増殖能は亢進しないことから,1日1回のブラッシングが必要であることが示唆される。また,創傷治癒において重要な線維芽細胞では10秒刺激群が最も細胞増殖活性が著明であった。 以上より1日1回10秒刺激が最も歯肉細胞の増殖活性を賦活化し,歯周ポケット形成を阻止する可能性が示唆された。
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