研究課題
矯正学的歯の移動においては、歯根膜の存在が重要な意義を持つことが種々の臨床的事実からも明らかとなってきている。一方、ペリオスチンはファシクリンファミリーに属する90kDaの分泌蛋白で、骨膜や歯根膜に特異的に発現し、細胞接着に関与すると考えられている。本研究では、力学的刺激付加による歯根膜線維芽細胞のペリオスチン遺伝子の発現様相の変化についてin vivo、in vitroの両面から検討を行うとともに、破骨細胞に対するペリオスチンの影響について検討を行った。In vivoにおける実験では、対照群において歯根膜線維芽細胞にペリオスチン遺伝子の発現を認めた。歯の移動開始3時間後から圧迫側歯根膜線維芽細胞においてペリオスチン遺伝子発現の増強が観察され、24時間後で最も顕著となった。また、歯の移動開始168時間後では、ペリオスチン遺伝子の発現は対照群とほぼ同程度にまで減弱した。In vitroにおける歯根膜線維芽細胞に対する力学的刺激付加実験では、力学的刺激開始24時間後にペリオスチン遺伝子の発現の上昇が観察され、同時に採取されたconditioned medium (CM)をヒト末梢血単核細胞由来破骨細胞形成系に添加すると、TRAP陽性多核細胞数と吸収活性の減少が観察された。また、mouse recombinantペリオスチン(600ng/ml)をマウス破骨細胞形成系に添加すると、TRAP陽性多核細胞数と吸収活性の減少がみられた。以上の結果から、矯正学的歯の移動においては、力学的刺激に伴い歯根膜線維芽細胞におけるペリオスチンの遺伝子発現が上昇し、歯周組織リモデリングの調節に関与する可能性が示唆された。また、ペリオスチンは破骨細胞形成に対して抑制作用を示すことが明らかとなった。
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