研究概要 |
本研究では、顎関節円板の細胞外マトリックスの加齢変化をタンパク質および遺伝子レベルで分子生物学的手法を用いて解明することを目的としていた。 実験動物として生後2,4,8,12,16,24、32週のWistar系雄性ラットを用いた。 リアルタイムPCR検出装置による遺伝子発現の定量:本研究では、従来のRNAprobeを用いたノーザン・ハイブリダイゼーションではなく、より定量性の高いリアルタイムPCRを用いて各種プロテオグリカンの遺伝子発現を検討した。その結果、バイグリカンの発現は成長に伴い減少傾向を示したが、デコリンは増加を示した。またバーシカンの発現は生後8週まで増加したが、その後成長に伴い減少した。 ウェスタン・ブロッティングによる各種分子の定量:円板からグアニジンによりコラーゲンとプロテオグリカンに分離/抽出し、透析後、凍結乾燥下で保存する。組織の各マトリックス分子のタンパク質発現は、それぞれの抗体を用いてウェスタン・ブロッティングで分析した。その結果、バイグリカンの発現は成長に伴い減少傾向を示したが、デコリンは増加を示した。また、バーシカンの発現は生後8週まで増加したが、その後成長に伴い減少した。 免疫組織化学染色:抗バイグリカン抗体に対する反応では、円板全体に比較的弱い、均一な染色パターンが認められたが、最も強い反応は円板後方帯において認められた。関節円板のデコリンおよびバーシカン抗体に対する反応は、バイグリカンと異なり顕著な領域差を示した。すなわち、前方帯、後方帯、前方付着部、後方付着部・下顎頭部を含む周辺部において、強い陽性反応が認められた。今後は、以上の結果を踏まえて、軟性飼料でラットを飼育することによる顎関節領域での力学的環境要因の変化が、顎関節の細胞外マトリックスの発現にどのような影響を及ぼしているのかについて検討していく予定である。
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