研究概要 |
本年度は昨年度の結果を踏まえ,3次元超音波診断装置を用い,嚥下時食塊形成の際の舌の3次元的形態の測定を行った。まず,超音波画像の歪について,ゼリー中に埋没した金属模型を用いて検討したところ,3次元画像導出に必要なプローブ走査方法のうち走査の回転半径,回転スピードの応じて画像の歪が変化することが明らかとなった。回転半径は大きく,スピードは低速の方がプローブの走査方向に沿った画像の歪が小さくなり,5%程度の延長に歪を抑えることが可能であった。また,走査方向に直角の方向では回転方向やスピードによらずわずかな歪であった。 ついで,この装置の特性を考慮した上で,ヒト嚥下に伴う食塊形成時の舌形態の観察を行った。舌の3次元構築画像作成のためのプローブ走査方向として,(1)2次元前額断画像 (2)2次元矢状断画像の集積の2方法を検討した。(1)では鮮明な画像が得やすいものの,舌の前後的特に後方部の描出領域に制限を受けること,これに対して(2)では舌背の前後的描出範囲は広いが,やや鮮明度に劣ることが明らかとなった。嚥下時に形成される食塊は(1)の手法により描れる範囲に収まっており,食塊形成に限定した観察であれば,(1)の手法が最も良好な結果が得られると判断し,プローブの走査条件(速度・回転半径)と併せて食塊形成観察のための規格化を終了した。 現在,被験者数を増やし,食塊形成の個人差や食塊量や姿勢の変化に伴う3次元的舌形態の変動について検討を行っている。
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